Technical Explanation減衰力調整のススメ
カントリーサスペンションの中には、減衰力調整が可能なショックアブソーバーがラインアップされています。
調整ダイヤルを回す事で、ショックアブソーバーの減衰力を強くしたり弱くしたりする事が可能です。
いろいろな路面状況に応じて気軽に調整して、是非減衰力の変化を体感して、楽しんで頂きたいです。
今回は、減衰力の変化によって車体の動きがどのように変化し、走りにどう影響するのかを説明していきましょう。
1.減衰力とは
自動車のサスペンションの多くは、スプリングとショックアブソーバーで構成されています。
走行中に路面等から受けた振動や衝撃をスプリングが吸収し、スプリングの振動をショックアブソーバーが吸収することで、振動を収束させています。
ショックアブソーバーによるスプリングの振動を収束させる力を「減衰力(げんすいりょく)」と言い、減衰力を任意に変えることで、体感的なサスペンションの硬さを変化させることができます。これが車の乗り心地の良し悪しにつながります。
そもそもショックアブソーバーとは具体的にどのような働きをしているのか、解説していきましょう。
まずはショックアブソーバーがない状態でのスプリングの動きです。おもちゃやミニカーのように「バネしかない」という極端な状態ですね。
路面からの振動はスプリングへと入力され、縮んで変形します。そして、スプリングは元に戻ろうと反発します。
その反発力がそのまま再びスプリングへの入力となり、今度は反対方向に変形し(伸び)ますが、また元に戻ろうと反発します。
その反発力が・・・、という具合に、いったん入力された衝撃はなかなか収まらず、スプリングは伸び縮みを繰り返すことになります。
次は、図1に対してショックアブソーバーを取り付けた状態でのスプリングの動きです。
路面からの振動がスプリングへ入力され、スプリングが縮もうとしますが、今度はショックアブソーバーの減衰力によって、スプリングの変形が抑えられます。また、その反発力についても、同様にショックアブソーバーの減衰力によって抑えられます。
ショックアブソーバーにより、スプリングの伸び縮みが早く抑えられ、振動が収束することになります。
では、ショックアブソーバーの減衰力を強めたり弱めたりした場合、スプリングの動きにどのように影響するのでしょうか。
図2の状態から、さらに減衰力を強めてみたのが図3です。
減衰力が強くなるとスプリングの伸び縮みはよりゆっくり抑えられ、変形するスピードは緩やかになります。
1回の変形量も少なくなるので、より早く振動が収束することが分かります。
2.走行性能への影響
①直進時の段差乗り越え
ショックアブソーバーの減衰力が弱いと、段差による車体の上下の揺れがなかなか収まらず、柔らかくてフワフワした乗り心地になります。全体的に緩い動きとなる印象です。
減衰力が強くなるとスプリングがあまり縮まず、硬いゴツゴツした感じがします。スプリングが縮むというより跳ねているかのような感覚です。
適切な減衰力に設定することで、段差の衝撃を優しく吸収した後、素早く揺れを収めることが可能です。
②オンロード
コーナリング時や加減速時にはどういう影響が出るのでしょうか。
車体の左右の傾きのことを「ローリング」といいます。
ロール量を決めるのはスプリングのバネレートですが、ロールスピードに影響するのがショックアブソーバーの減衰力です。
減衰力が弱いとロールスピードは速く、弱すぎるとふらふらとコシが無い印象を受けます。
減衰力が強いとロールスピードは遅くなります。速い速度で曲がった時でも踏ん張りが効くような印象を受けます。またステアリングの反応が敏感になります。
また、車体の前後の傾きを「ピッチング」といいます。
減衰力が弱いとピッチングの変化が大きく、車体姿勢を安定させるのが難しくなります。またピッチスピードも早いので前後に揺られ、車酔いしやすくなります。
減衰力が適切に設定されていると、タイヤにゆっくりと荷重を伝える事が出来るようになり、前後荷重と車体姿勢をコントロールしやすくなります。
③オフロード
四駆が走る場所は平坦な道ばかりではありません。斜面やモーグルを走行している時にもショックアブソーバーは重要な役割を果たします。
路面の傾斜が急で、車体が横に傾いたときに、安定して踏ん張れるかどうか。
車体の揺れ戻しが大きくなると横転の可能性も高まります。
また、ダート路面ではショックアブソーバーの減衰力が強すぎると十分にトラクションが掛からず、タイヤのグリップが抜けてしまいスリップしやすくなります。